重心と浮力の重心
船が傾いたとき、元に戻そうとする復元力を考える。 復元力は重力による下方への力と浮力による上向きの力の 釣合いできまる。
重力は重心に作用する力(黒矢印)で代表させることができ、 一方浮力は喫水面以下の図形の重心に作用する力(色の付いた 矢印)で代表させることが出来る。
船が静かに浮いている状態であるとすると、重力の大きさと 浮力の大きさは同じである。
船の傾きを変えるのは重力と浮力のモーメントである。 図のように右に傾いたとき、浮力の重心が右側にあれば、傾きから 復元するほうに働き、逆に左側にあれば、さらに傾くほうに働く。 下図にも示したように、重心が低い位置に有るとき傾きから 回復する方向に力がはたらき(転覆しない)、重心が高く、喫水面付近にあるとき、 重力と浮力のモーメントは船体がさらに傾く方向にはたらく (転覆する)。
下の図は船体が傾いたときの浮力の重心の変化を重心の位置を基準にして描いたもの
左から
重心が喫水面に有るとき。
重心が喫水面から底面までの間の1/4のところに有るとき。
重心が喫水面から底面までの間の3/4のところに有るとき。
また
赤 0度
青 15度
黄色 30度
緑 45度
つぎに円柱の場合。
密度一定の材質で出来ている場合を考え、重心は円柱の軸と一致するとする。
円柱が回転しても重心と浮力の重心の位置関係は変らないので復元力も 転覆させる力もない(回りだしたら回り続ける)。
ここまでをまとめると、
重心が浮力の重心より低い位置に有る場合、復元力があり安定。 これは、いわば上からぶらさげているのだから自明の結論といえる。
重心が浮力の重心より高い位置にあっても複元力がある場合がある。 それは船体の形状による。たとえば方形ならばあるが、円筒にはない。 また方形であっても幅、重心の高さによる。しかしその復元力は小さい。
で、なにがいいたいかというと、木材の削りだしのような比重が1より軽く 均質な素材で船を作ると、中を空洞にしないかぎり必ず重心の高さは浮力の 重心より高いので(浮力の重心と喫水面以下にある木の重心の位置は一致し、 喫水面以上に有る部分が全体の重心を浮力の重心より上に上げるから)、 不安定、あるいは安定度が低くなりやすい。おわり。